核融合(続)

Inertial  Confinement Fusion

慣性核融合

DT燃料でできたカプセルを爆縮し、飛散する前に核融合反応を起こす方式を慣性核融合といいます。この方式ではカプセルと第一壁との間にリチウムを配置することができるため、核融合炉の構造は磁場閉じ込めによる定常核融合炉と比べて単純で堅牢なものとなります。
慣性核融合炉の動作はパルス的で、カプセルの燃料は燃焼とともに減少していきます。DとTを合わせた初期粒子数密度をN0、反応の発生する密度をnとすると

D = nT = N0/2 – n

となります。燃焼率をφ = 2n/N0と定義すると燃焼速度に関する方程式が得られます。これを解くと

φ = N0τ/(N0τ + 2/〈σv〉)

となります。ここでτは燃焼の持続時間で、爆縮された半径rの「炉心」プラズマを情報が伝わる時間で決まります。

τ = r/3c

ここでc = 2×106 [m/s] は音速です。N0とτを質量密度ρと半径rを用いて表すと

φ = ρr/(ρr + 100)

となります。プラズマの熱エネルギーWTと核融合出力Woutとはφを介して比例関係にあり、この比をQ’とします。Q’は定常核融合炉のQとはだいぶ意味合いが違います。

Q’ = Wout/WT = 220φ

慣性核融合においては反応で生成されたα粒子はカプセルから出ることができず、そのエネルギーはそっくりプラズマの加熱に使われます。Q’ = 5でα粒子のエネルギーがプラズマの熱エネルギーと等しくなり、「点火」が起こります。中心部で点火が起こると燃焼波が発生し、燃焼が急激に進むと言われています。燃焼率φとρrおよびQ’の関係は次の表のようになります。

φρr [kg/m2]Q’
1.4×10-30.461
2.3×10-22.45
1/62037
1/35073
1/2100110

これからわかるように、慣性核融合においてはカプセルの燃料がすべて燃えるということはありません。φ = 1/3とするとρr = 50 [kg/m2] となります。ρとrの組み合わせと燃料カプセルの質量M、および核融合出力Woutは次の表のようになります。DT燃料の液体の状態での密度は210 [kg/m3] です。

ρ [kg/m3]r [m]M [kg]out [J]
2100.24121.3×1015
2.1×1032.4×10-20.121.3×1013
2.1×1042.4×10-31.2×10-31.3×1011
2.1×1052.4×10-41.2×10-51.3×109

12 μg のDTカプセルを液体密度の1000倍に圧縮することにより、1.3 GJ の核融合出力が得られます。1.3秒に1回の割合でカプセルの爆縮を行えば、100万kWの出力が得られることになります。

レーザー核融合

レーザーは離れた場所から小さな空間に短時間に大きなエネルギーを投入することのできる優れた手段です。ロレンス・リバモア研究所のレーザー施設NIF(National Ignition Facility)では、192本のガラスレーザーを集中することにより、緑色の光で1.8 MJのエネルギーと500 TWのピークパワーを得ることができます。
レーザーを直接カプセルに照射しても強い爆縮は行えません。 カプセル表面に均一にエネルギーを与えることが爆縮におけるキーとなります。このため、レーザーをホーラムとよばれる放射容器に照射し、そこから発生するX線をカプセルに照射します。レーザー実験の目的は均一な爆縮の行えるカプセル構造の開発であり、点火を実証することです。2013年9月、NIFにおいてブレークイーブン(Q’ = 1)が達成されました。
レーザー実験によって点火が達成されても、それで発電ができるわけではありません。Q’の意味が定常核融合炉のQと大きく違うことに加え、電気からレーザーへのエネルギーの変換効率があまりにも低いためです。

Zピンチ核融合

放射容器を加熱するドライバはレーザーである必要はありません。イオンビームやZピンチから放射されるX線もドライバとなります。 サンディア研究所のZ装置は蓄積エネルギー11 MJ、20 MAの電流を流すことのできるZピンチ装置でした。
Z装置では1.8 MJ、160 TWのX線放射が観測されました。この装置は2006年に改造され、2倍の蓄積エネルギーをもち、26 MAの電流を流すことのできるZR装置として生まれ変わりました。ZR装置からは2.7 MJ、350 TWのX線放射が得られています。