プラズマとは

はじめに

プラズマの語源はギリシャ語で「形作る」という意味の動詞plasseinで、そこから「形作られたもの」という名詞plasma、「形作ることの」という形容詞plastikosができたようです。前者はその後、宗教的な意味合いから「神によって形作られたもの」を表すようになり、細胞の原形質やリンパ液・血漿など「生命活動にかかわる物質」として用いられてきました。後者は「人間が形作った」という意味でプラスチックとして用いられています。(後藤憲一「プラズマ物理学」)

20世紀初頭、放電現象に見られる電離気体に「プラズマ」という名前を与えたのは Irving Langmuir です。 それまでは外部から眺めるだけだった放電現象に対し、内部にプローブを挿入して物理計測を試み、その特徴的な性質を明らかにしました。 これがプラズマ研究の始まりです。

今日では家電製品のいろいろなところにプラズマ(放電現象)が使われ、プラズマプロセスは半導体の微細加工やナノテクノロジーに無くてはならないものになっています。 また、地球の大気圏から一歩外に出ればそこはプラズマの世界であり、宇宙空間の現象はプラズマを抜きには語ることができません。

一方、最近の健康志向より、本来の意味である生命活動や生命力としての「プラズマ」が食品などに使われるようになっていますが、これは放電とは関係ありません。

イオンクラフトは高電圧放電によってイオンの流れを作り物体を浮上させるものですが、空気清浄機として実用化されています

プラズマとは

Langmuir によると、プラズマとは放電現象に見られる電離気体のうちイオンと電子がほぼ同数存在し、中和のとれた部分のことをいいます。 現在ではこの定義は拡張され、荷電粒子系全般についてプラズマという呼び方が定着しています。

いろいろなプラズマ

Langmuir の定義によるいわゆる「プラズマ」は、古典統計に従う弱結合プラズマです。 放電で生成されたプラズマや宇宙のプラズマの多くはこれに属します。

プラズマのもつ熱エネルギーに比べて粒子間のクーロン力が強い場合、プラズマは自由に動くことができず、強結合プラズマとよばれます。 レーザー冷却された極低温のイオン粒子群、加速器の中の低温で高密度のバンチ粒子群などは強結合プラズマの例です。 プラズマ中に形成されるダスト(微粒子)は大きな電荷をもち、簡単に強結合状態になります。

第4の物質状態

プラズマは固体、液体、気体に続く第4の物質状態である、と言われることがあります。 放電現象に対してこの表現を最初に用いたのは William Crookes だと言われています。 物質の四態は古代ギリシャで考えられていた、世界を形成する4つの根源、地、水、空気、火に対応するものと考えることもできます。

プラズマ宇宙(Plasma Universe)

プラズマ宇宙ということばは Hannes Alfvén が創ったものです。 宇宙の99%はプラズマ状態である、と言われるように、地球大気圏から一歩外に出ればプラズマの世界が広がっています。 言い換えれば、地球が地磁気によってプラズマから隔離されているわけです。 地球上でプラズマを発生させるには大きなエネルギーが必要ですが、宇宙空間はプラズマ現象であふれています。
現在では宇宙の90%以上は暗黒物質であると言われていますので、この表現は「目に見える宇宙の99%はプラズマ状態である」と言い換えられています。